Infinity ロケット

安全で低価格、サステナブルな宇宙飛行

Orbspaceは、乗客 3 人乗りで、高度 200km まで上昇し、ソフトランディングで地球へ安全に帰還する弾道飛行小型ロケット「Infinity」を開発しています。完全再使用型で、カーボンニュートラルなバイオメタンを燃料とするInfinityは、最高の安全性と低コストだけでなく、最高レベルの持続可能性も実現します。

中でもInfinityロケット最大の特徴は、妥協ゼロの安全性です。推進剤の選定から緊急停止システムまで、たとえ一部のエンジンが停止しても安全に着陸できるよう、徹底的に安全性を追求した設計となっています。
もう一つの特徴はシンプルであること。打上げにも大げさな設備は必要なく、簡単な発射台や洋上プラットフォームで日常的な運用が可能です。

汎用性を備えたロケット

Infinityは宇宙へ行って帰ってくる「ロケット型ドローン」と表現できるかもしれません。強化型エンジンを搭載すれば、宇宙ゴミや衛星が最も多い高度800kmまで上昇させることができ、宇宙旅行だけでなく、宇宙ゴミの除去やリモートセンシングなどにも応用できます。Infinityが完全再使用型ロケットであるため、こういったミッションも極めて低価格で実施することが可能になるのです。

衛星によるリモートセンシングと異なり、必要な時に必要な場所に、数時間以内という迅速さでセンサや観測機器を打上げ、高度3000kmからの視界を得ることができます。

進化するロケットInfinity

Infinityは「世界最小級」のサブオービタルロケットですが、拡張可能な設計になっています。運用を継続することで再使用技術が成熟、コスト効率が向上し、地球軌道や以遠への打上げも安定的に実施できるようになります。このような「拡張型宇宙開発」は、初めから巨額の資金を投入し、大規模な打上げが要求される従来型宇宙開発では難しく、柔軟な「ニュースペース」企業だからこそ可能な手法です。

Orbspaceの技術

当社の軸となる技能「ロケットシステム工学」

小規模企業が宇宙開発する時代へ
破壊的革新が実現!

ロケットは、飛翔軌道分析から空気力学、熱設計、構造設計、推力分析、電子工学、制御など、広範囲で多彩な技術・技能を組み合わせて作る、いわば技術の集合体です。これらをすべて組み合わせる技術は「システム工学」と呼ばれ、習得は簡単ではありません。Orbspaceは実際のロケット開発により構築したこの技術をフルに活用しています。

宇宙開発は今、大きな転換期にあります。これまでは大企業しか成し遂げられなかった開発も、様々な技術の進歩により、小規模の企業が実現できるばかりか、中小企業ならではの自由で柔軟なアイディアにより、コストを劇的に下げ、新しいロケットを開発できるようになっています。

その一方で変わらないものもあります。最高の安全性と信頼性は現在でも有人ロケットにおいて最も重要な要素です。その実現に不可欠なのは、ほとんどの競合他社にはない、経験とシステム工学の知識なのです。

HyperMECH

タンクを機体構造の一部に

HyperMECHは、極超音速 金属複合ハイブリッド材 (Hypersonic Metal-Composite Hybrid) タンク構造の略です。耐高温金属と他の材料を組み合わせることで (ハイブリッド材)、極超音速の大気圏再突入時の荷重に繰り返し耐えられる、機体とタンク構造を実現します。またHyperMECHタンクは、損傷に強く、日常的な点検・保守・修理が容易で、雨や砂・塵、着陸時の高温エンジンにも耐えられる設計になっています。

HyperMECH構造を導入することで、これまで他のロケットが実現できなかった「日常的な運用のしやすさ」が可能になります。つまり、信頼性が高く、安全で、低コストのロケット運用を実現するためのカギとなる技術なのです。

高性能スチール

高温(再突入)と低温(燃料)の両方に晒される再使用型ロケットへの適合性を認定

材料に関する研究は近年目覚ましい進歩を遂げており、Orbspaceはロケットや宇宙に適した材料の開発状況を継続的に調査しています。こういった材料には高温や低温(極低温)に対する優れた強度、延性、耐食性を持つだけでなく、コスト効率よく製造、検査、修理ができるものもあります。適切な特殊材料を選択することは、最高水準の安全性と低コストの達成には決して欠かせない要素なのです。

セーフティクリティカルロケット搭載コンピュータ

乗客の安全を確実に守るために

当社のロケット搭載コンピュータ (OBC) は、3つのコンピュータで構成される「三重冗長系」と言われるものです。同様に高精度慣性測定装置 (IMU)、GPS、電源など、飛行に不可欠なコンポーネントもすべて同じ構成を取り入れています。この手法により市販品のハードウェア部品を用いて、最軽量で低電力消費、低放熱でありながらも極めて高い性能を実現することができます。また社内の認定試験を徹底的に繰り返すことで、最高の信頼性も保証し、セーフティクリティカルな利用を可能にします。

バイオメタン

自然界に存在するロケット燃料

持続可能なロケット開発を行い、開発と自然保護を両立させるため、Orbspaceは最もグリーンなロケット推進剤である「バイオメタン」を使用します。バイオメタンガスは、バクテリアによって自然に生成されるもので、人間の体内でも生成されるものです。100%サステナブルでCO2の排出がなく、高効率で燃焼させることで、排気ガスも最小限に抑えることができます。そのためInfinityロケットエンジンの炎はほとんど目に見えず、汚染煙も発生しません。

クラスターエンジンの導入

一部のエンジンが停止しても安全に飛行・着陸

Inifinityには複数のエンジンを束ねることで推力を得るクラスタ式が採用されています。推力生成を複数の燃焼室が担うため、飛行中に万が一いくつかのエンジンが停止した場合でも、推進力を保って飛行を継続させ、安全に着陸することができます。クラスタエンジンの一番のメリットはシンプルな設計で高い安全性を実現できることです。第2の利点は、ロケット操縦がすべて差動推力偏向によって行われるため、ジンバルが不要という点です。つまり、推進装置全体で動かす必要がある部品は、推薬弁だけなのです。可動部品は不具合の原因となることも多く、これを減らすことにより、安全性を向上させコストを下げることができます。改良型ではいわゆるエアロスパイクノズルを追加することで性能もアップします。

セラミック製ロケットエンジン

熱で溶けないセラミックが、究極の安全性を実現

ロケットエンジンの材料には一般的に金属が使われていますが、エンジン内の燃焼温度は、一般的な金属の溶融温度をはるかに超える高温になるため、高度な冷却装置を備える必要があります。これを回避するため、Orbspaceでは溶けないセラミックをエンジン材料に採用しています。過熱が起きた場合でも、致命的な故障につながることなく、飛行中でも安全にエンジンを停止し、着陸後に点検修理を実施できます。このようなエンジンはOrbspaceが本当に安全な有人飛行を実現するためのメインの要素です。

爆轟波点火システム

ロケットエンジンを安全に同時点火できる、シンプルかつ極めて高精度な点火システム

ロケットエンジンの信頼性・安全性を高めるために不可欠な要素の1つは、正確で確実な点火です。以前からエンジンの点火に使用されてきた長い実績を持つ爆轟波点火システムは、シンプルな設計で製造も容易にも関わらず、確実な点火を可能にします。このシステムは、低コストと高い安全性を同時に実現するという当社のロケット設計理念やアプローチを示すものです。